【著者】ブラック太郎
柔道整復師・鍼灸師(国家資格)、NASM-PES(米国認定パーソナルトレーナー)整形外科クリニック・パーソナルトレーニングジム・整骨院にて14年以上勤務。腰痛と運動指導を専門に、延べ多数のクライアントの動作改善に関わってきました。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。
- 下半身の筋トレが腰痛に関係する理由(運動連鎖のしくみ)
- 「股関節→骨盤→体幹」という筋トレの優先順位
- 腰痛に関係しやすい4つの筋肉(腸腰筋・中臀筋・ハムストリングス・内転筋)
- 自分の腰痛タイプをセルフチェックして、最短ルートで各記事へ進む方法
結論
下半身の筋トレで腰の負担を減らすには「股関節→骨盤→体幹」の順番が重要です。
下半身の筋トレで腰痛の予防・軽減の一助にしようとするとき、腰まわりだけを鍛えても効果が出にくいケースがあります。
14年以上の臨床現場では、「腰の問題」ではなく「股関節まわりがうまく動かない分の負担を、腰が代わりに引き受けている」パターンが非常に多い印象です。
腸腰筋・中臀筋・ハムストリングス・内転筋。この4つのいずれかがうまく機能しにくくなると、その分の負担が腰椎(腰の骨)にかかりやすくなる傾向があります。
なお、腰痛の原因は椎間板・関節・姿勢・生活習慣など複合的に絡み合っており、「下半身だけが原因」とは言い切れません。
この記事は、腰痛に関係しやすいよくあるパターンを整理したものです。
当てはまる部分を参考にしながら、違和感があれば医療機関にも相談してください。
注意:まず医療機関への受診をご検討ください
以下に当てはまる場合は、筋トレより先に整形外科・内科などへの受診を優先してください。
とくに★マークの症状は、早めの受診をおすすめします。
- ★脚のしびれが強い・足に力が入りにくくなってきた(早急に受診)
- ★排尿・排便のコントロールが困難になっている(早急に受診)
- 発熱を伴う腰の痛み
- 安静にしていても夜間に強い痛みがある
- 最近の外傷・転倒後から急に腰が痛くなった
- 理由がわからないまま体重が急に減っている
これらはレッドフラッグ(危険なサイン)と呼ばれ、整形外科的な問題以外の原因が隠れている可能性があります。
「筋トレで様子を見よう」と判断する前に、受診で原因を確認することを優先してください。
上記のレッドフラッグに該当せず、「慢性的な腰の重さや張り感を運動で改善したい」という方に向けて、ここから本題に入ります。
まず自分の腰痛がどのパターンに近いかを確認するところから始めましょう。
まず30秒で確認|自分の「腰痛タイプ」と下半身筋トレの最短ルート

下半身の筋トレで腰痛対策をしたい方は、まずこのセルフチェックで自分のパターンを確認してください。
直感で「これかも」と思うものを選んでください。
完璧に当てはめようとしなくて大丈夫です。
まずひとつ試してみて、合わなければ戻って別のパターンを選べばOKです。
【セルフチェック:腰痛に関係しやすい下半身のポイントはどれ?(診断ではありません)】
セルフチェック
腰痛に関係しやすい下半身のポイントはどれ?(診断ではありません)
- パターン①「デスクワーク中心・座りっぱなしが多い」→腸腰筋(股関節前側)が硬くなりやすい傾向があります→まず試す候補→[腸腰筋のチェック〜筋トレ実技(ID26)]へ
- パターン②「歩いていると腰が重くなる・片脚で立つとふらつく」→中臀筋(お尻の横)が弱くなっているサインかもしれません→まず試す候補→[中臀筋を鍛えて骨盤を安定(ID27)]へ
- パターン③「前かがみになると腰が痛い・靴下が履きにくい」→ハムストリングス(太もも裏)の硬さが骨盤に影響している可能性があります→まず試す候補→[ハムストリングスのストレッチ×筋トレ(ID28)]へ
- パターン④「O脚・X脚気味・産後に骨盤の不安定感がある」→内転筋(内もも)の弱さが骨盤の安定に関わっているかもしれません→まず試す候補→[内転筋と腰痛の意外な関係(ID29)]へ
※複数当てはまる場合は、迷ったら①腸腰筋(ID26)→②中臀筋(ID27)の順から始めると進めやすいです。
※腰痛の原因は複雑に絡み合っているため、1つのパターンに当てはまっても、他のケアが必要な場合もあります。違和感があれば別のパターンも試してみてください。
手っ取り早く各記事の筋トレ実技に進みたい方は、上のチェック結果から直接お進みください。
「なぜ下半身から鍛えるのか」「どの順番で進めるべきか」の理由をしっかり確認したい方は、このまま読み進めてください。
「腰まわりだけ鍛える」では腰痛改善に結びつきにくい理由|下半身の筋トレと運動連鎖という考え方

私は整形外科クリニックで働いていた頃、腰痛で来院するクライアントのほぼ全員に「腹筋を鍛えなさい」という指示が出ていることに気づきました。
体幹(腹筋まわり)を鍛えることは、腰痛対策として方向性は正しいと思っています。
ただ、股関節の動きに問題がある状態で体幹だけを先に強くしても、腰の負担が減りにくいケースを何度も経験してきました。
体幹は大切。ただ、何を先に整えるかという「順番」がより重要だと感じています。
身体の動きは、隣り合う関節がお互いに連動しながら成り立っています。
この「関節をまたいだ力の伝わり方」を運動連鎖(キネティックチェーン)と呼びます。
股関節が動きにくいと腰椎が代わりに動く
たとえば、床のものを拾う動作を考えてみてください。
股関節がスムーズに曲がれば、腰椎はほとんど動かずに済みます。
しかし股関節の動きが制限されていると、足りない動きを腰椎が補おうとします。
この「腰椎が必要以上に動かされる」くり返しが積み重なることで、腰まわりの筋肉や靭帯に慢性的な負担がかかりやすくなります。
ある研究では、慢性的な腰痛を抱える方は、腰痛のない方と比べて股関節まわりの筋力が低下している傾向があると報告されています(※1)。
ただしこれは「関連がある」ことを示すデータであり、「股関節の弱さが腰痛の原因である」と因果関係を断定するものではありません。
「腰が痛い」状態でも、股関節側の問題が関係している場合もあることを示唆する根拠のひとつです。
骨盤は「股関節と腰椎の橋渡し役」
骨盤は、下では股関節と、上では腰椎(腰の骨)と直接つながっています。
骨盤の傾きや左右のズレは、そのまま腰椎の角度に影響します。
股関節まわりの筋肉が弱かったり硬かったりすると、骨盤が安定しにくくなり、その影響が腰まで伝わります。
【臨床での気づき】
パーソナルトレーニングジムで働いていた時期、腰痛でスクワットを怖がるクライアントを多く担当しました。
そのとき気づいたのは、「腰が痛い」と訴える方の多くが、スクワット中に股関節ではなく腰椎で動きを作ってしまっているということです。
股関節まわりを整えることで、スクワットへの恐怖感が下がるケースを繰り返し経験してきました。
ただし、あくまで「そのような傾向がある」という臨床での印象であり、全員に同じ効果があるわけではありません。
下半身の筋トレで腰痛対策をする順番|股関節→骨盤→体幹

優先順位まとめ(3ステップ)
- 股関節まわりを整える(腸腰筋・ハムストリングスの柔軟性、中臀筋・内転筋の筋力)
- 骨盤を安定させる(中臀筋・内転筋の強化を中心に)
- 体幹の支えを加える(腹圧の活用→詳細は[腹圧(IAP)の教科書(ID11)]へ)
この順番に理由があります。
股関節の可動性と筋力が不十分なまま体幹だけを鍛えても、骨盤が安定しにくいため腰への負担が残りやすい傾向があります。
まず「股関節が十分に動いて(可動性)、しっかり支えられる(筋力)状態」を作ること。
そのうえで骨盤の安定を高め、体幹の補助を加えていくのが、臨床でも効果が出やすいと感じている順番です。
「体幹だけを鍛えればいい」は本当か?
体幹トレーニングが腰痛対策として広く知られるようになった背景には、複数の研究をまとめた調査の普及があります。
体幹の安定性を高めることが腰痛の改善に一定の効果をもたらす可能性は示されています。
一方で、2023年の調査によると、股関節へのアプローチ(ストレッチや筋力強化)が腰痛改善に有効である可能性も報告されており(※2)、両方を組み合わせることが有望と考えられています。
ただし、この研究ではエビデンスの確実性はまだ高くないとされているため、自分の反応を見ながら無理なく進めることが現実的です。
また、WHOも2023年のガイドラインで、慢性腰痛に対して運動療法を継続することを推奨しており(※3)、運動で腰痛を管理するという方向性は、国際的にも支持されています。
腰痛に関係しやすい下半身の筋肉4選|どこを筋トレで鍛えるべきか

腰痛に関係しやすい下半身の筋肉は、大きく4つに分けて考えられます。
ここでは「腰への影響のしくみ」を整理します。実際の筋トレ・ストレッチの手順は各専門記事に集約していますので、チェック結果に合った記事に進んでください。
①腸腰筋(ちょうようきん)|座りっぱなしで硬くなりやすい股関節前側の筋肉

腸腰筋は、背骨(腰椎)と太もも(大腿骨)をつなぐ筋肉です。
長時間座り続けると縮まりやすく、硬くなると骨盤を前に引っ張る力が強くなります。その結果、腰が過度に反りやすくなり、腰椎(腰の骨)への圧迫が増す一因になることがあります。
ただし、骨盤の傾き自体が直接腰痛を起こすというよりも、偏った動作が繰り返されることで負担が蓄積しやすくなるという考え方が現在は主流です。
整骨院に来院するクライアントで、デスクワークが多い方に腸腰筋が硬くなっているケースが目立ちます。
手でほぐした後に腰の動きがラクになったと話すクライアントは少なくありませんが、あくまで個人差があります。
→腸腰筋のチェック・ストレッチ・筋トレの実技は[腸腰筋が硬いと腰が痛い?チェック→ストレッチ→筋トレの実技マニュアル(ID26)]へ
②中臀筋(ちゅうでんきん)|歩くと腰が痛い人の骨盤安定を担う筋肉

中臀筋は、お尻の横にある筋肉で、歩行時に骨盤が左右に落ちないよう支える役割を担っています。
中臀筋が弱いと、片脚で体重を支える瞬間に反対側の骨盤がストンと落ちてしまいます。
片脚ごとにこのズレが生じることで、歩くたびに腰まわりへ繰り返し負担がかかりやすくなる傾向があります。
「歩くと腰が重くなる」と訴えるクライアントに中臀筋の働きを確認すると、片脚立ちで骨盤が大きく傾くケースが多い印象です。
そのようなクライアントに中臀筋の強化を取り入れると、歩行中の骨盤の安定性が上がり、腰の疲れ感が軽減しやすくなる傾向があります。
→中臀筋の筋トレ実技(片脚安定・骨盤を守るトレーニング)は[中臀筋を鍛えて骨盤を安定:歩くと腰が痛い人の腰痛予防トレ(ID27)]へ
③ハムストリングス(太もも裏)|前かがみで腰が痛い人の骨盤後傾に関係する筋肉

ハムストリングスは太ももの裏側に位置し、骨盤の底(坐骨)からひざの裏側につながっています。
ハムストリングスが硬くなると、骨盤が後ろに倒れやすくなります(骨盤後傾)。
骨盤後傾が続くと、腰の自然なカーブが失われ、椎間板(背骨のクッション)の一部に圧力が集中しやすくなる一因になることがあります。
「前かがみになると腰が痛い」「靴下を履く動作がつらい」という訴えのあるクライアントに柔軟性評価を行うと、ハムストリングスの硬さが顕著なケースが多い印象です。
→ハムストリングスの柔軟性改善と筋トレ実技は[ハムストリングスが硬いと腰痛に?骨盤後傾をほどくストレッチ×筋トレ(ID28)]へ
④内転筋(ないてんきん)|O脚・X脚の崩れから骨盤を支える内もも

内転筋は、脚を内側に閉じるだけの筋肉ではありません。
内転筋と骨盤底筋(骨盤の底を支えるインナーマッスル)は連動して骨盤を下から支える働きをすることがあり、骨盤の安定にも関わっています。
内転筋が弱いと、立つ・しゃがむ場面で膝が内側に崩れやすくなり(ニーイン)、その連鎖が骨盤のぐらつきにもつながりやすくなります。
O脚・X脚気味のクライアントや、産後に骨盤の不安定感を訴えるクライアントに内転筋の問題が重なっているケースは臨床でも珍しくありません。
→内転筋と腰痛の関係・実技は[内転筋と腰痛の意外な関係:O脚・X脚の崩れを支える内ももトレ(ID29)]へ
下半身の筋トレと腰痛|よくある疑問(FAQ)

Q、下半身の筋トレをすると翌日腰が張るのは正常ですか?
下半身の筋トレ後に腰が張る感覚には、いくつかの理由が考えられます。股関節の動きが不十分なまま下半身を鍛えると、腰まわりの筋肉が代わりに働いてしまうことがあります。
また、腰を安定させようとする筋肉が過剰に緊張し、翌日に張り感として出るケースもあります。
翌日には軽くなるようであれば、一時的な筋肉疲労の可能性が高いです。
翌日以降も張り感・痛みが増す・続く場合は、フォームや負荷の見直しが必要なサインです。
筋トレ中・筋トレ後にこのサインが出たら中止してください
- 脚にしびれが出る、またはしびれが強くなる
- 運動中に「ズキッ」「バキッ」といった鋭い痛みが走る
- 翌日に痛みが前日より明らかに悪化している
- 腰の痛みが運動後に数日続いて回復しない
これらのサインが出た場合は、その種目を中断し、症状が続くようであれば医療機関を受診してください。
→筋トレ翌日の腰の状態の見分け方は[筋トレ翌日の腰痛は筋肉痛?怪我?見分け方と今日やるべき行動(ID8)]へ
Q、腰痛があってもスクワットはできますか?
スクワットは下半身の筋トレの代表的な種目ですが、腰痛持ちの方がいきなり行うと腰に負担がかかりやすいです。ヒップヒンジ(股関節を折りたたむ動き)を先に習得してから進むと、腰への負担を減らしやすくなります。
→腰痛予防スクワットのフォームと進め方は[腰痛予防スクワット:ヒップヒンジ習得ドリルで腰と膝を守る(ID20)]へ
Q、腰痛持ちが下半身の筋トレをするなら、メニューはどう組めばいいですか?」
週に何回・どの種目を組み合わせるかというメニュー設計は、自分の腰痛タイプによって変わります。
大まかな進め方として、セルフチェックで当てはまったパターンの記事から1種目だけ取り入れて週3回続けることが、無理なく始めやすい入口になります。
複数の筋肉をまとめて整えるルーティンの組み方は、ジムでの種目の順番・負荷の決め方をまとめた記事を参考にしてください。
【迷ったらこの2週間プランから始めてください】
セルフチェックで当てはまったID(26〜29のいずれか)を1つ選び、週3回で2週間続けてください。
翌日に痛みが増す場合は負荷とフォームを見直します。
2週間試して変化が乏しければ、別のパターンに切り替えてOKです。
→腰痛持ちのジムでの順番・ルーティン設計は[ジムで腰痛予防!マシン中心の安全ルーティンと順番(ID19)]へ
下半身で腰痛を防ぐ筋トレ|4つの筋肉へのアクセスガイド

| 筋肉 | 主な腰への影響 | こんな方に | 詳細記事 |
|---|---|---|---|
| 腸腰筋 | 腰が過度に反りやすくなる | 座りっぱなし・デスクワーク多め | →ID26 |
| 中臀筋 | 歩くたびに骨盤が左右に揺れる | 歩くと腰が重くなる | →ID27 |
| ハムストリングス | 骨盤が後ろに倒れて腰の負担が増す | 前かがみで腰が痛い | →ID28 |
| 内転筋 | 膝の崩れから骨盤がぐらつく | O脚・X脚気味・産後 | →ID29 |
※ID○○はWordPress上で実際のURLとアンカーテキストに差し替える。
まとめ|下半身の筋トレで腰痛を防ぐ|この記事のポイント

【この記事のポイント】
- 「下半身の筋トレ」で腰の負担を減らすには、腰だけでなく股関節側から整えることが重要です
- 優先順位は「股関節→骨盤→体幹」の順番が、臨床でも効果が出やすい傾向があります
- 腰痛に関係しやすい代表的な筋肉は腸腰筋・中臀筋・ハムストリングス・内転筋の4つです
- セルフチェック(ページ上部)で自分のパターンを確認し、該当記事の実技に進んでください
- しびれ・筋力低下・排尿排便の問題・夜間痛など危険なサインがある場合は、筋トレより先に受診を検討してください
腰痛×筋トレの全体像に戻って確認したい場合は、こちらからどうぞ。
→[腰痛×筋トレの全体像(ID1)]
参考文献
※1:Is there hip muscle weakness in adults with chronic non-specific low back pain? A cross-sectional study(2023年)/ Zanotti Pizol G, et al. / BMC Musculoskeletal Disorders https://bmcmusculoskeletdisord.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12891-023-06920-x(腰痛患者における股関節周囲筋の筋力低下を指摘した研究)
※2:The effectiveness of hip interventions in patients with low-back pain: A systematic review and meta-analysis(2023年)/ Ceballos-Laita L, et al. / Brazilian Journal of Physical Therapy https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10120300/ (股関節へのアプローチが腰痛改善に有効である可能性を示した調査)
※3:WHO guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain in adults in primary and community care settings(2023年)/ World Health Organization https://www.who.int/publications/i/item/9789240081789 (WHOによる、慢性腰痛に対する運動療法の推奨ガイドライン)
