腰痛があるとき、「今日は筋トレを休むべきか、それとも続けても大丈夫なのか?」
と迷う方はとても多いです。
判断を間違えると悪化につながりますが、正しく調整すれば回復を早めることもできます。
この記事では、腰痛の種類ごとの休むべきサイン、適切な休む期間、安全にできる自宅&ジムの筋トレ、再発を防ぐトレーニングの組み立て方まで、
柔道整復師・鍼灸師として14年間臨床で指導してきた経験をもとにわかりやすく解説します。
今日のあなたの腰痛が「休むべきか・続けてもいいのか」を明確にし、
安全にトレーニングを続けるための判断基準を手に入れてください。
結論|腰痛のとき筋トレを「休む」「続ける」をどう判断するか

腰痛があるとき、
「今日は筋トレを休むべきか、それとも続けてもいいのか?」
と迷う方はとても多いです。
実際に、私がこれまで14年間の臨床で見てきたクライアントの中でも、
判断を間違えたことで悪化したケースと正しく調整して改善が早まったケースが大きく分かれました。
このセクションでは、腰痛時の筋トレ判断を最短で正しく決めるための基準をわかりやすくまとめています。
まずは、
「絶対に中止すべきサイン」
「セルフチェックで今日の方針を決める方法」
「休む・続けるの3つの選択肢」
を順番に整理します。
この記事の中でも最も重要なパートなので、ぜひここだけはじっくり読んでください。
まず結論|迷ったら「強い痛み+しびれ+動けない」は即中止・受診
結論からお伝えします。
「強い痛み」
「脚のしびれ」
「動作困難」
のいずれかがある場合は、筋トレは即中止してください。
この3つがそろうほど症状が強い場合、神経の圧迫や急性の組織損傷が起きている可能性が高く、自己判断でトレーニングを続けるのはリスクが大きいからです。
とくに次のような状態は、私が臨床で14年間見てきた中でも絶対に無理をしてはいけないサインです。
- お尻〜脚にかけてビリッと走るようなしびれがある
- 立つ・歩く・前屈など、日常の何気ない動作に強い痛みが出ている
- 片脚に力が入りづらく、踏ん張りが効かない
- どの姿勢でも痛みが引かず、夜も眠れない
実際に、以前「少し痛いけど我慢できるから」とデッドリフトを続けたクライアントがいました。
翌週にはしびれが悪化して歩行が困難になり、回復まで3か月以上かかったケースもあります。
逆に、痛みが強い段階で早めに休んだクライアントは、経過が良好で「1〜2週間で日常動作に支障なし」まで戻ることが多いです。
迷うときは、
「強い痛みorしびれor動けない」
→その日は中止して評価を優先する
という判断を基準にしてください。
セルフチェックチャート|3つの質問で「休むor続ける」を判断
腰痛と筋トレの判断は、「全部休むorいつも通りやる」の二択ではありません。
必要なのは、今の状態に合わせた適切な判断です。
以下の3つの質問に答えるだけで、今日の筋トレをどう扱うべきかが明確になります。
🔸Q1|痛みの強さはどれくらい?(0〜10)
- 0〜3:違和感〜軽い痛み→調整すれば継続可能なことが多い
- 4〜6:動きによってつらい→種目の一部は中止、軽度メニューに変更
- 7〜10:動くのがこわいレベル→筋トレは原則中止
🔸Q2|脚にしびれ・力の入りにくさはある?
- なし:継続の余地あり
- 一瞬だけ:注意しながら負荷調整
- 持続している/力が入りにくい:その日は完全休止+受診推奨
🔸Q3|日常動作は普段通りできている?
- 問題なくできる:コンディション調整でOK
- 少し気をつかえばできる:一部種目は負荷を下げて実施
- かなりつらい:筋トレは休むべき
🔸3つの回答から導く判断
- Aパターン:軽い痛みのみ×しびれなし×日常動作OK
→負荷を落とせば継続可能 - Bパターン:痛み4〜6×動作に不安あり×しびれなし
→痛みが出る種目を中止し、安全メニューに切り替え - Cパターン:痛み7以上orしびれor動けない
→完全休止(受診も検討)
私の臨床経験では、Aパターンのクライアントは「完全休養よりも適度に動いた方が改善が早い」ことが多いです。
逆にCパターンで無理をすると、ほぼ例外なく悪化します。
「完全休養」「種目変更」「負荷調整」の3パターンで考える
腰痛時の筋トレ判断は、次の3つの枠に整理すると非常にわかりやすくなります。
🔸①完全休養:痛みが強い・しびれがある・動作が困難
強い痛みや神経症状がある段階では、筋トレは回復の妨げになります。
この時期に必要なのは、
- 痛みを悪化させない最小限の生活動作
- 痛みが落ち着く姿勢の確保
- 組織への負担を避けること
以前、ぎっくり腰で来院したクライアントが「これくらいなら腹筋はできるはず」と無理に続けた結果、炎症が長引き回復が3倍遅れた例もあります。
「休む=後退」ではありません。
正しい休み方は、結果的に最短での回復につながります。
🔸②種目変更:一部の動きだけ痛い場合に最適
- デッドリフトは痛いが、ヒップリフトは平気
- スクワットは怖いが、レッグプレスは痛くない
このようなケースでは、
腰へのストレスが小さい種目へ変更するだけでトレーニング量を保てます。
臨床でも、腰痛を抱えるクライアントには
- 立位→仰向け・四つ這い
- フリーウエイト→マシン
といった形で「安全ゾーンの動き」に誘導することで、痛みの悪化なく運動を継続できています。
🔸③負荷調整:痛みが軽度で動ける場合の最も現実的な方法
軽い腰痛(痛み3〜4/10以下)なら、
重量をいつもの5〜7割に減らすだけで安全に継続できることが多いです。
ポイントは:
- 可動域を狭める
- セット数を1〜2セット減らす
- 反り腰や勢いの動作を避ける
- 腹圧(お腹の張り)を優先する
臨床でも、軽度の腰痛で「まったく動かない」より、安全なフォームで軽く動いた方が痛みの改善が早い傾向があります。
🔸この章のまとめ
- 強い痛み・しびれ・動作困難→即中止・受診が最優先
- セルフチェック3つでその日の方針は判断できる
- 休むか続けるかは「完全休養/種目変更/負荷調整」の3択で考える
- 軽度の腰痛は適切に動くほうが改善が早いことが多い
腰痛タイプ別|筋トレを休むべきサインと「休む期間」の目安

一口に「腰痛」といっても、
ぎっくり腰のような急性の痛みと、重だるさが続く慢性的な痛みでは、筋トレの扱い方がまったく違います。
さらに、しびれ・発熱・外傷歴などがある場合は、そもそもトレーニングを続けてよい状態ではありません。
私が14年間の臨床でクライアントを見てきた中でも、
腰痛タイプに合わせて「休む期間」や「再開のタイミング」を誤らなかった人ほど、回復も再発予防もスムーズでした。
このセクションでは、
- ぎっくり腰(急性)
- 慢性腰痛
- 危険サイン(しびれ・発熱・外傷後)
の3つに分けて、休むべき期間・再開の基準・気をつけるポイントを整理していきます。
ぎっくり腰・急性腰痛|筋トレを休むべき期間と再開チェックポイント
ぎっくり腰(急性腰痛)は、炎症が強く起きているため、痛みが落ち着くまで筋トレは原則中止です。
私の臨床経験でも、急性期に無理して筋トレを再開したクライアントは、例外なく回復が遅れています。
🔸休むべき期間の目安
結論としては以下が最も現実的で安全です。
- 強い痛みがある最初の2〜3日:完全休養(筋トレはしない)
- 日常動作が可能になる3日〜1週間:歩行・軽いストレッチのみ
- 痛みが半分以下になった1〜2週間後:軽負荷トレから再開
もちろん個人差はありますが、
「痛みがピーク→改善傾向→動ける」
という回復曲線に沿って負荷を上げていくのが基本です。
🔸再開してよいか判断する3つのチェックポイント
以下3つをクリアしていれば、軽めの筋トレ再開を検討できます。
- 日常動作(歩く・立つ・前屈)が痛み3/10以下でできる
- 脚へのしびれ・力の入りにくさがない
- 寝返りや靴下をはく動作で鋭い痛みが出ない
臨床では、ぎっくり腰のクライアントにこの3つを確認し、
- OKなら→「まずは体幹安定系(バードドッグ・デッドバグ)」
- 不安が残るなら→「もう数日、軽度の活動で様子見」
という流れを採用しています。
私の臨床例
以前、30代男性のクライアントがぎっくり腰直後に「脚トレだけなら大丈夫」とスクワットを実施し、痛みが悪化して歩けない状態に。
正しい回復手順を踏んでいれば1週間で改善するレベルでしたが、結果的に1か月以上再開できませんでした。
一方で、別のクライアントは指示通り急性期を休み、5日目からデッドバグ→10日目からヒップヒンジ練習と進め、14日で通常トレに復帰。
急性期の対応によって回復スピードに大きな差が出る典型例です。
慢性腰痛・違和感レベル|休みすぎない上手な付き合い方
慢性腰痛の場合、完全に休み続けるよりも、適度に動いたほうが改善が早いことが多いです。
これは臨床経験だけでなく、エビデンスでも支持されています(運動療法は慢性腰痛に有効と報告多数)。
🔸結論:痛みが軽度なら「動きながら整える」が正解
次の3つに当てはまる場合、筋トレをゼロにする必要はありません。
- 痛みが10段階で3〜4以下
- 動作の工夫で痛みが軽くなる
- 翌日に痛みが強く残らない
このレベルの腰痛は、
- 姿勢のクセ
- 股関節や胸椎の硬さ
- 腹圧が入らないフォーム
などが原因で出ているケースがほとんどです。
「休むほど悪化」するケースさえあります。
🔸休みすぎないための3つのルール
- 重量はいつもの50〜70%
- 可動域は痛くない範囲に限定
- 反り腰・丸まり腰を作らない(腹圧中心)
実際、慢性腰痛のクライアントにフォームを改善しながら軽負荷で動いてもらうと、
3回目〜5回目あたりで痛みの出方が変わることが多いです。
🔸重要:完全に休むと悪循環に入ることもある
以前、慢性腰痛のクライアントが「怖いから」と1か月ほぼ完全に筋トレを休んだところ、
- 体幹が弱くなる
- 姿勢が崩れる
- 日常の負担が増す
という悪循環に入り、症状が強くなってしまいました。
慢性腰痛はうまく動かすこと自体が治療になります。
しびれ・発熱・外傷歴など|今すぐ医療機関に相談すべきサイン
腰痛の種類の中には、筋トレどころか即時の医療評価が必要なケースも存在します。
これは現場でも絶対に見逃してはいけないポイントです。
🔸危険サイン(レッドフラッグ)一覧
以下の症状がある場合は、筋トレは中止し、医療機関での評価を優先してください。
- 脚のしびれが強く、持続している
- 足に力が入りづらい、つまずきやすい
- 発熱をともなう腰痛
- 転倒・交通事故・高所落下など外傷後の痛み
- 排尿・排便のコントロールが難しい
- 夜間痛(寝ていても痛みが強い)
これらは、椎間板ヘルニア、感染、骨折、腫瘍などが関与している可能性があります。
🔸なぜ危険なのか?
神経の圧迫や炎症が強い状態で筋トレを行うと、
- しびれの悪化
- 筋力低下
- 回復期間の延長
など、深刻な悪化につながるリスクが高まります。
特に脚の力が入りにくい状態は、臨床でも「トレーニングを続けるべきではない」典型パターンです。
🔸現場であった事例
20代男性のクライアントが、外傷後の腰痛を「ただの筋肉痛」と判断してトレーニングを継続し、
結果として腰椎の腰椎分離症が判明したことがあります。
適切な休養と評価が遅れたため、復帰まで数か月かかりました。
逆に、危険サインにすぐ気づいて受診したクライアントは、2〜3週間程度で安全にトレーニングへ復帰できています。
🔸この章のまとめ
- 急性(ぎっくり腰)→「休む期間の明確化」が最優先
- 慢性(違和感レベル)→「休みすぎず動きながら整える」が正解
- しびれ・発熱・外傷後→医療機関へ。筋トレは即中止
腰痛のタイプごとに「休む/続ける」の判断は大きく変わります。
迷ったときはいつでも相談してください。
腰痛時でもできる安全な筋トレメニュー(自宅編)

腰痛があるときでも、正しい種目を選べば自宅で安全に筋トレを続けることができます。
むしろ、軽度の腰痛であれば、体幹や股関節まわりを適切に動かすことで痛みが改善するケースも少なくありません。
私が14年間の臨床で多くのクライアントを見てきた経験からも、
動かし方が悪くて痛い→正しく動かしたら改善
という場面は頻繁にあります。
ここでは、腰に負担をかけずにできる
- 体幹(インナー)を安定させるトレーニング
- お尻・股関節まわりを鍛えて腰の負担を減らすトレーニング
- 安全な回数・頻度・負荷設定の目安
を、初心者でも取り組める形で紹介します。
【自宅での筋トレを安全に行うためのおすすめグッズ】
腰痛がある時期は、体を支えてくれる道具があるとフォームが安定して無理がなくなります。
私の臨床でも、自宅トレをするクライアントには以下の3つをよく推奨しています。
体幹を安定させるインナーマッスル系トレーニング
腰痛時にまず優先したいのは、体を支える深層の筋肉(インナーマッスル)を働かせることです。
腰痛の多くは「腰が頑張りすぎて、体幹がうまく働いていない状態」から起こります。
動きの安定性が欠けると、どんな種目をしても腰に負担が集中しやすくなります。
ここでは、臨床でも最も効果を感じやすいデッドバグ・バードドッグの2種目を紹介します。
🔸デッドバグ(DeadBug)|腹圧を保ちやすい安全な体幹トレ
- 腹圧を入れたまま四肢を動かす練習ができ、腰の反りを抑えて安定させる
- 初心者でもフォームを保ちやすい
やり方:
- 仰向けで膝90°、腕を天井へ伸ばす
- 息を軽く吐きながら「お腹が薄くなる感覚」で腹圧をセット
- 片腕は万歳して上げる。腕と反対側の脚もゆっくり伸ばす
- 腰が反らない範囲で10回
よくあるNG例:
- 腰が浮く(=腹圧が抜けている)
- 手足を速く動かす(勢いでやると効果ゼロ)
🔸臨床での実例
慢性腰痛で来院した40代男性は、スクワットで必ず腰が反ってしまい痛みが出ていました。
腹圧が弱くコントロールが効かなかったのですが、デッドバグを2週間続けると
「重いものを持ったときに腰がズキッとしなくなった」
と改善しました。
🔸バードドッグ(BirdDog)|脊柱の安定性を高める万能トレ
- 四つ這い姿勢で体幹と背筋群を安全に鍛えられる
- 腰に負担をかけずに体幹の伸展コントロールを強化できる
やり方:
- 四つ這いになり、背中は一直線
- 片腕+反対の脚を伸ばす
- 骨盤が左右にブレないようにゆっくり戻す
- 左右10回ずつ
NG例:
- 腰が反る
- 骨盤が大きく回旋する
🔸臨床コメント
腰痛持ちの方は、片脚を上げた瞬間に腰を反らせてしまうクセが多いので、
「腕だけ→脚だけ→同時」
の順に負荷を上げるとスムーズです。
お尻・股関節まわりを鍛えて腰の負担を減らすトレーニング
腰痛の多くは、股関節がうまく使えず、腰が動きすぎてしまうことが原因です。
そのため、股関節を動かす主役であるお尻(大臀筋・中臀筋)を鍛えることが、腰の負担を大きく減らします。
ここでは初心者向けで腰に優しい
- ヒップリフト
- クラムシェル
の2つを紹介します。
🔸ヒップリフト(HipLift)|お尻で支える感覚を身につける
- 腰を反らずにお尻で身体を持ち上げる練習になる
- 骨盤の安定性が高まり、立ち・歩きでも腰が頑張りにくくなる
やり方:
- 仰向けで膝を立てる
- かかとで床を押すように、お尻を持ち上げる
- 肩〜膝が一直線になったらゆっくり下ろす
- 10〜15回
NG例:
- 腰を反って持ち上げる
- お腹が力まず、前ももだけしか使われていない
🔸臨床コメント
「腰痛のせいでスクワットが痛い」
というクライアントの多くが、ヒップリフトでお尻を使う感覚を覚えると
「腰じゃなくてお尻で踏ん張れるようになった」
と痛みが軽くなることがよくあります。
🔸クラムシェル(ClamShell)|中臀筋を確実に働かせる
- 骨盤を安定させる中臀筋を鍛え、反り腰や左右のブレを軽減
- 立ち上がり・歩行・片脚動作が安定して腰の負担が減る
やり方:
- 横向きで膝を軽く曲げる
- かかとはつけたまま、上側の膝を開く
- ゆっくり戻す
- 15回
NG例:
- 骨盤が後ろに倒れる(よくある失敗)
- 勢いで開いてしまう
🔸臨床コメント
ぎっくり腰後の回復期にも使いやすい安全な種目です。
フォームさえ守れば腰への負荷はほぼゼロで、股関節の安定性が一気に上がります。
腰痛時の自宅筋トレの「回数・頻度・負荷設定」の目安
どれだけ良い種目でも、負荷設定を間違えると逆効果になることがあります。
腰痛時は、とくに「やりすぎ」よりも「足りないくらい」がちょうどいいと考えてください。
ここでは、臨床でクライアントに指導している安全な設定をそのまま公開します。
🔸回数:少なめでOK(10〜15回×1〜2セット)
- 筋肥大目的ではないため、フォームの安定を優先
- 疲れすぎると腹圧が抜けて腰が反りやすくなる
🔸頻度:週2〜3回がベスト
- 回復を妨げずに継続しやすい頻度
- 慢性腰痛の方は「毎日やらなきゃ」より「継続しやすい頻度」が重要
🔸負荷設定:「痛み3/10以下」を基準にする
私が14年間クライアントに伝え続けている最重要ルールはこれです。
痛みが10段階で3を超えたらその日は中止
動けば多少の違和感が出ることはありますが、3以上の痛みが続く場合はフォームか負荷が合っていないと判断します。
🔸休みと再開の目安
- 翌日に痛みが残らない→継続OK
- 翌朝に強い張りや痛み→セット数を半分に減らす
- 前屈・後屈で鋭い痛み→その日は完全休止
🔸この章のまとめ
- 腰痛時は体幹(インナー)+お尻・股関節が最優先
- 自宅でできる安全メニューは「デッドバグ」「バードドッグ」「ヒップリフト」「クラムシェル」
腰痛時でもできる安全な筋トレメニュー(ジム・マシン編)

腰痛があると
「ジムでどの種目をやっていいのか分からない」
と不安になる方が多いですが、
実は選び方とフォームのポイントさえ押さえれば、安全にトレーニングを続けることができます。
とくに、フリーウエイトで痛みが出る人は、マシンを上手に使うことで負担を大きく減らせます。
私は14年間の臨床で、フリーウエイトで腰痛が悪化していたクライアントに
「マシン代替+フォーム修正」
を提案することで、多くの方が数週間以内に痛みを軽減しトレーニングを再開できるようになりました。
このセクションでは、
- フリーウエイトが不安なときのマシン代替案
- ベンチ・ケーブル・マシンで腰を守るフォームのポイント
- ジムで起こりやすい腰の負担のクセと解消方法
まで、腰痛期でも安全に取り組める実践的な内容をまとめています。
【ジムで腰を守るためのサポートギア】
軽度の腰痛がある時期は、フォームが崩れやすく、腹圧も抜けやすくなります。
そのため、以下のような 補助ギア が安全性を高めてくれます。
フリーウエイトが不安なときのマシン代替メニュー
フリーウエイトは可動域が自由な分、腰が反ったり丸まったりしやすく、痛みが出やすい場面も多いです。
腰痛時は、
「腰の動きをなるべく固定してくれるマシン」
へ切り替えるだけで、安全性が一気に高まります。
以下は、臨床でもよく提案する代替セットです。
🔸スクワット→レッグプレス
メリット:
- 背もたれがあるため、腰が反りにくい
- 股関節で押す動きが理解しやすい
ポイント:
- 膝が内側に入らないようにする
- 可動域は痛みが出ない深さでOK
🔸臨床コメント
スクワットで必ず腰に痛みが出るクライアントも、レッグプレスに変えただけで痛みなく下半身を鍛えられるケースが非常に多いです。
🔸デッドリフト→マシンロウorシーテッドロウ
メリット:
- 重心が安定し、腰の前後揺れが少ない
- 背中の筋肉だけを狙いやすい
ポイント:
- 背中を反りすぎず、胸の位置を高くキープ
- 腰を動かさず肩甲骨で引く
🔸臨床コメント
ヒップヒンジのクセが強い初心者は、デッドリフトの動作中に腰を丸めやすいですが、
ロウ系に変更すると安全に背中を強化できるようになります。
🔸ベンチプレス→マシンチェストプレス
メリット:
- バーの軌道が固定されるため、反り腰になりにくい
- 安定した座位で胸を鍛えられる
ポイント:
- 肩がすくまないよう意識
- 肩甲骨は軽く寄せる程度でOK
🔸臨床コメント:
ベンチプレス中に腰が強く反って痛みが出る方は、マシンに替えるだけでフォームの安定度が格段に上がります。
ベンチ・ケーブル・マシンで腰を守るフォームのポイント
腰痛時のトレーニングでは、「フォームの優先順位」を変えるだけで安全性が大きく高まります。
ポイントは以下の3つです。
🔸①腰ではなく肋骨の位置を整える
腰を反る人は、実は腰だけでなく肋骨が前に開いている(リブフレア)ケースが多いです。
改善ポイント:
- 息を軽く吐いて肋骨を下げる
- そのまま腹圧を入れる
これだけで、腰の反りが自然と抑えられます。
臨床でも腰痛クライアントの9割以上に指導しています。
🔸②ケーブル種目は骨盤の角度を固定すると安全性UP
ケーブルは自由度が高い分、骨盤がグラついて腰へ負担がかかりやすいです。
意識すべきポイント:
- へそを軽く上に向けるイメージで骨盤を中間位に
- 左右に体が流れないように足幅を広めにする
🔸③マシンは「椅子の設定」が8割を決める
シートの高さ・背もたれ角度が体に合っていないと、腰に負担がかかります。
設定の目安:
- 座ったときに膝が90°
- 背もたれに背中全体が軽く触れる
- 反り腰にならない位置に調整
🔸臨床例:
40代女性はアダクションマシンで必ず腰を痛めていましたが、背もたれと座面の角度を調整するだけで痛みゼロでトレーニングが継続できています。
ジムでやりがちな「腰に負担が集中する動き」の減らし方
腰痛を悪化させる原因の多くは、
「種目そのもの」ではなく
「動きのクセ」にあります。
ここでは、ジムで最も多い腰に負担が集中するパターンと、その改善方法を解説します。
🔸NG動作①:反り腰で力を出そうとする
典型例:
- ベンチプレスで腰が極端に反る
- ケーブルプレスで肋骨が前に飛び出す
改善方法:
- 足裏をしっかり床に押す
- 肋骨を軽く下げて腹圧を入れる
🔸NG動作②:背中ではなく腰で引いてしまう
典型例:
- ラットプル/ロウで腰を反って引く
- 重い重量を扱うと体がのけ反る
改善方法:
- 「胸を軽く前に出す→引く」の順
- 肩甲骨から動かし始める
🔸NG動作③:脚トレで股関節ではなく腰が動きすぎる
典型例:
- スクワットで前傾した瞬間に腰が丸まる
- デッドリフトでヒップヒンジが作れない
改善方法:
- お尻を後ろに引くから動き始める
- 可動域を狭くして練習する
🔸臨床での共通パターン:腰が代償動作をしている
腰痛のクライアントを観察すると、ほぼ共通して
- 股関節が動かず
- 腹圧が弱く
- 胸椎が硬い
という状態にあります。
その結果、トレーニング中に腰だけが働きすぎるのです。
これを改善するには
- 可動域を狭くする
- 重量を落とす
- 正しい動きの順番を覚える
の3つが非常に効果的です。
🔸この章のまとめ
- フリーウエイトで痛いときはマシンへ代替するだけで安全性が大幅アップ
- ベンチ・ケーブル・マシンは骨盤・肋骨・設定が腰痛対策のカギ
- 腰に負担が集中するクセは、フォーム修正と負荷調整で改善できる
NG例|腰痛を悪化させる筋トレ・フォームの注意点

腰痛があるときに最も注意すべきなのは、「どの筋トレをやるか」よりも、どう動いているか(フォーム)です。
腰痛を悪化させるケースの多くは、種目そのものではなく動作のクセによって腰に負荷が集中することが原因です。
私が14年間の臨床で見てきた中でも、
- スクワット
- デッドリフト
- ラットプルダウン
- ベンチプレス
など、王道種目で腰痛を悪化させた方のほとんどが、
同じNG動作パターンを踏んでいます。
このセクションでは、腰痛を悪化させやすい
- 典型的なNGフォーム、
- 危険な体の使い方
併せて「痛みを我慢する」が絶対NGな理由を詳しく解説します。
反り腰スクワット・丸まりデッドリフトなど典型的NG例
腰痛を悪化させやすい代表例は、以下の2つです。
- 反り腰スクワット(過度な腰椎伸展)
- 丸まりデッドリフト(腰椎の屈曲)
どちらも「腰が動きすぎている」ため負荷が集中し、痛みの原因になりやすい動きです。
🔸反り腰スクワット|腰椎伸展で負荷が一点集中する
NGポイント:
- 胸を張ろうとして肋骨が開きすぎる
- 骨盤が前傾しすぎて腰が反る
- お尻ではなく腰で支えてしまう
起こりやすい理由:
- 股関節の曲げ伸ばしを使えていない
- 腹圧が弱く、体幹がブレている
🔸臨床での典型例:
40代男性のクライアントは、スクワットのたびに腰痛が悪化していました。
フォームを確認すると、深くしゃがむほど腰が過度に反り、腰椎で支えるクセが強かったのが原因。
骨盤の角度と腹圧を整えるだけで、痛みがほぼ消失しました。
🔸丸まりデッドリフト|腰椎屈曲で椎間板にストレス
NGポイント:
- 引き始めから腰が丸まっている
- 肩がすくみ、背中が丸まったままバーを引いている
- 重量に引っ張られてフォームが崩れる
起こりやすい理由:
- ヒップヒンジ(股関節で曲げる動作)ができていない
- 胸椎が硬く、背中が起きない
🔸臨床コメント:
デッドリフトでぎっくり腰になったクライアントのほとんどがこのパターンです。
腰が丸まった状態で重い重量を扱うと、椎間板に大きな負荷がかかります。
🔸そのほかのNGフォーム例
- ラットプルで上体が大きくのけ反る(腰が反る)
- ベンチプレスで腰が過度に反りブリッジ状態
- ロウで骨盤が左右に大きく揺れる
- プランクで腰が落ちる
いずれも「腰を固定できていない」ことが共通点です。
腰ばかり使ってしまう危険な動きの共通点
腰痛を悪化させてしまう人の動作には、明確な共通点があります。
これは種目に関係なく、体のクセとして現れます。
🔸①股関節が動かず「腰が代わりに動きすぎる」
スクワット・デッドリフト・ランジなどで多く見られるパターンです。
特徴:
- お尻を引いて座るのではなく、腰から曲がる
- 股関節が前後に動かず、腰だけ折れる
改善ポイント:
- 壁に軽くお尻を当ててヒップヒンジを練習する
- 股関節主導を意識する
🔸②肋骨が開きすぎて腹圧が抜ける(リブフレア)
腹圧が入らないと腰の安定性は大きく低下します。
特徴:
- 胸を張りすぎて腰が反る
- 息を吸いすぎて胸だけが広がる
改善ポイント:
- 軽く息を吐いて肋骨を下げる
- そのまま腹圧をキープ
🔸③胸椎が硬く、背中を伸ばせず腰で代償する
胸の背骨(胸椎)が動かないと、人は腰で動きを補おうとします。
特徴:
- デッドリフトで背中が丸まる
- ラットプルでのけ反りすぎる
改善ポイント:
- 胸椎伸展のモビリティ(フォームローラーなど)
- ロウ系で肩甲骨の動きを練習
🔸④重量設定が高すぎる
フォームの崩れの大半は、重すぎる重量が原因です。
特徴:
- 挙げられるかどうかギリギリの重量を使いがち
- 1RMチャレンジ後に腰が痛む
改善ポイント:
- 痛みがある時期は普段の5〜7割
- コントロールできる重量だけ使う
「痛みを我慢して続ける」のが絶対NGな理由
腰痛を悪化させる最大の要因は、
「痛みがあるのに続けてしまうこと」
です。
これは「根性論が悪い」という話ではなく、身体の構造的に我慢すると悪化する仕組みがあるためです。
🔸理由①:痛みが出た時点で動作が破綻している可能性が高い
痛みがある=正しい動きができていないサインです。
- 腹圧が抜ける
- 股関節ではなく腰が動く
- 可動域が限界を超えている
- 神経が刺激されている
このような状態を続けると、腰に負担が蓄積し悪化します。
🔸理由②:神経を刺激し続けると慢性化しやすい
痛みを無視して続けると、神経が過敏になり「痛みが治りにくい体」へ変化してしまうことがあります。
つまり急性腰痛はすぐ治るけれどそれを放っておくと慢性腰痛に移行して治りにくくなるということです。
臨床でも、
- 始めは軽い痛み
- 我慢して続ける
- 数週間後に慢性化
というケースは非常に多いです。
🔸理由③:回復期間が2倍〜3倍に延びることがある
ぎっくり腰気味の状態で我慢して続けた方は、正しく休んだ人より2〜3倍長く回復に時間がかかる傾向があります。
一方で、痛みを感じた時点で中止したクライアントは、数日〜1週間で安全に再開できるケースがほとんどです。
🔸この章のまとめ
- 腰痛を悪化させるNGフォームは「反りすぎ」「丸まりすぎ」が中心
- 共通点は「股関節が動いていない」「腹圧が抜けている」など体のクセ
- 「痛みを我慢して続ける」は最も危険で、慢性化・回復遅延の原因
- 痛みが出たら一度ストップし、フォーム・負荷を見直すことが最短の回復につながる
筋トレを休んでいる間にやるべきこと|ストレッチ・日常動作・セルフケア

筋トレを休んでいる期間は、痛みが治まるのをただ待つ時間ではありません。
体の使い方や姿勢を整え、再発しにくい体に近づけるための準備期間になります。
私は14年間の臨床で、同じ「休み期間」でもこの準備をしていた人ほど、筋トレ復帰後のパフォーマンスや痛みの落ち着きが圧倒的に良いと強く感じています。
ここでは、腰痛がある時期でも安全に取り組める
- ストレッチ
- 日常姿勢
- セルフケア
の3つの視点から、回復を早める方法をまとめます。
難しいことは必要ありません。腰を守りながら体を整える基本だけを確実に押さえましょう。
腰を直接グイグイ伸ばさないストレッチの考え方
腰痛があると「腰が固いから、腰を伸ばせばいい」と考えがちですが、実は逆効果になることがよくあります。
腰は本来「大きく動かす部位」ではなく「安定させる部位」です。
そのため、腰そのものを無理に伸ばすと、かえって負担を増やすケースを臨床でも繰り返し見てきました。
ストレッチで優先すべきは、腰の周りで動きが不足している部分です。
特に次の3つは、腰痛持ちの方が硬くなりやすい場所です。
- お尻(大臀筋)
- 太ももの裏(ハムストリングス)
- 胸まわり(胸椎)
これらが硬くなると、スクワットや前屈の動作で腰が代わりに動きすぎてしまいます。
反対に、これらをゆるめると「腰が勝手に楽になる」ことも少なくありません。
たとえば、膝を軽く曲げて行う前屈は腰に負担をかけずに太もも裏を伸ばせますし、
椅子に座って胸を開く動きを数回繰り返すだけで胸椎の動きが改善され、腰の緊張がふっと抜けることもあります。
大切なのは、腰を攻めるのではなく、腰の味方になる部分を整えるという考え方です。
座り方・立ち方・歩き方|日常姿勢を整えて負担を減らすコツ
筋トレを休んでいる間は、日常の姿勢や動作が腰の回復を大きく左右します。
実際、痛みが長引く方の多くは「日常姿勢のクセ」が改善されていません。
逆に、姿勢だけ整えたら腰痛がスッと軽くなった例は臨床で何度も経験しています。
まず座り方ですが、骨盤が後ろに倒れないように深く腰掛け、背もたれに体を軽く預けるだけで腰の負担は大きく減ります。
椅子の前側にちょこんと座るクセがある方は、腰痛が慢性化しやすい傾向があります。
立ち方は、足裏のどこに体重を乗せるかがポイントになります。かかとに体重が偏ると腰が反りやすくなるため、土踏まずの中央あたりに重心が落ち着く位置を探してみてください。
その際、「息を軽く吐いて肋骨を少し下げる」だけでも腰の反りが抑えられ、体幹が安定します。
歩き方は、腰をひねりすぎず股関節から脚を動かす意識が大切です。
歩幅を大きくしようとすると腰が捻れやすいので、無理に広げる必要はありません。
真っすぐ脚を送り出すように歩くと、腰のねじれが少なくなり、痛みのぶり返しが起こりにくくなります。
姿勢を整えると、筋トレを再開したときのフォームが安定し、痛みの再発予防にもつながります。
休んでいる間こそ、体の使い方を見直すチャンスです。
フォームローラー等を使ったセルフケアとやりすぎ注意ポイント
フォームローラーは腰痛時のセルフケアとしてとても便利ですが、使い方を間違えると逆効果になります。
特に「腰が痛いから腰をゴリゴリやる」やり方は、臨床でも悪化の相談が非常に多いパターンです。
ローラーを使うべき場所は、腰そのものではなく胸まわり(胸椎)と太ももの外側(大腿筋膜張筋)です。
胸椎が硬いと、スクワットやデッドリフトで腰が反ったり丸まったりしやすくなり、結果として腰痛が長引きます。
胸の上をローラーで転がすだけでも、呼吸が入りやすくなり、姿勢が整い、腰の緊張が自然に取れることがあります。
また、太ももの外側が硬いと骨盤が引っ張られ、立っているだけで腰が反りやすくなることがあります。
ローラーで軽くほぐすことで骨盤が安定し、腰の負担が軽くなります。
ただし、ここで注意してほしいことが3つあります。
- 強く押さない(痛気持ちいい程度で十分)
- 呼吸が止まるほど圧をかけない
- 腰そのものを直接押さない
強刺激は筋肉が防御反応で固くなり、かえって痛みが増えるケースが臨床で多くあります。
セルフケアは、「体がリラックスできる強さ」で行うことが安全かつ効果的です。
休んでいる期間に、腰の周りを整えるケアを習慣化すると、筋トレ再開がとてもスムーズになります。
再開後のフォームも安定しやすくなり、腰痛を繰り返さない体に近づけます。
再発を防ぐための「腰に優しい」筋トレメニューの組み立て方

腰痛は、一度良くなっても同じ原因で繰り返しやすいという特徴があります。
そのため、筋トレを再開する際は、
「筋肉を鍛える」だけでなく「腰に負担がかかりにくい体の使い方」
をセットで育てていくことがとても重要です。
私が14年間、延べ数千名の腰痛クライアントを指導してきた経験からも、再発を防げた人に共通していたのは、
- 体幹
- お尻
- 股関節
この3つを軸にしたメニュー設計を継続していたことでした。
ここでは、腰に負担をかけず、むしろ「腰の守りを固める」ための筋トレプログラムの作り方を、今日から実践できる形でまとめます。
「体幹+お尻+股関節」を軸にした週◯回のモデルプログラム
腰痛の再発を防ぐメニューを組むとき、まず押さえてほしいのは「腰を直接鍛えようとしない」ということです。
腰そのものは安定させる役割であり、安定させるためにはその周囲の筋肉
特に体幹・お尻・股関節──がしっかり働く必要があります。
そのため、腰に優しいメニューは以下の3カテゴリーで構成すると安定します。
- 体幹(インナー+アウター)
- お尻まわり(大臀筋・中臀筋)
- 股関節の曲げ伸ばしを改善する動作練習
この3つを軸に、週2〜3回のシンプルなプログラムを組むと再発予防に効果的です。
🔸例:週2〜3回の腰に優しいモデルメニュー
Day1(自宅メイン)
- デッドバグ
- クラムシェル
- ヒップリフト
Day2(ジムメイン)
- バードドッグ
- レッグプレス(軽負荷)
- マシンロウ
Day3(余裕がある人のみ)
- 胸椎モビリティ
- ランジ(可動域少なめ)
- サイドプランク
臨床でも、この3軸を中心にトレーニングしていた方ほど、
「腰に意識を向けなくても痛みが出なくなった」と実感されることが多いです。
重さ・回数・種目の増やし方|無理せずステップアップするコツ
腰痛からの復帰期で最も大切なのは「急に元の負荷に戻さないこと」です。
回復段階の体は、筋力というより動きの質が乱れやすい状態にあります。
そのため、少しずつ段階を踏んで負荷を増やしていく必要があります。
負荷を増やすときは、次の順番が最も安全にステップアップできます。
- 重さの前に「フォームの安定」
- 可動域を少し広げる
- 重量を10〜20%ずつ上げる
臨床では、腰痛が落ち着いてきたからといって、以前の重量に急に戻した結果、数日後に再発してしまうケースを何度も見てきました。
逆に、「フォームが乱れない範囲で少しずつ進める」人は再発率が圧倒的に低いです。
また、トレーニング中に痛みが3/10を超えたら、その日は負荷を上げないと決めておくと、無理を防ぐことができます。
「頑張る」よりも、「続ける」ことが腰のためには大切です。
腰痛持ちが守りたい自分ルールチェックリスト
腰痛を繰り返さないためには、トレーニング内容だけでなく、自分で守れるルールを作っておくと非常に強い予防策になります。
実際、臨床で再発を防げているクライアントほど、こうした小さなルールを日常的に徹底しています。
特に腰痛持ちが守ると効果が高いのは次の3つです。
- その日の痛みが3/10を超えたら中止か軽負荷へ変更する
- フォームが崩れ始めたらセット中でも一度リセットする
- 前日の疲労が強い日は、メニューを1つ減らす(やらない選択も可)
これらはどれもシンプルですが、腰への負担を最小限にしつつ、トレーニングを習慣として続けるための安全装置として機能します。
私の経験上、こうしたルールを守る人ほど、
- フォームの質が安定する
- 無駄な動きが減る
- 筋トレの効果も高まる
結果として腰痛と上手に付き合える体を手に入れています。
🔸この章のまとめ
- 腰痛予防の筋トレは「体幹+お尻+股関節」の3軸で構成する
- 負荷はフォーム→可動域→重量の順で少しずつ上げる
- 自分ルールを決めて守ると、再発率が大きく下がる
Q&A|腰痛と筋トレと「休む」に関するよくある質問

腰痛と筋トレに関して、読者からよくいただく疑問をまとめました。
ここでは、まず結論だけ知りたい人がすぐ理解できるように一言の回答を提示し、その後に専門的な理由をわかりやすく解説します。
迷ったときの判断基準として活用してください。
Q1|少し痛い程度なら筋トレを続けても大丈夫ですか?
回答:軽い痛みなら条件付きで続けても大丈夫です。ただし「痛み3/10」が限界の目安です。
軽度の腰痛は、適度に体を動かしたほうがむしろ改善が早いことがあります。
14年間の臨床経験でも、「違和感〜軽い痛み」レベルのクライアントは、フォームを整えつつ軽負荷で継続したほうが翌日の痛みが軽くなるケースが多いです。
ただし痛みが3/10を超える、しびれが出る、動作がぎこちなくなる、といったサインがあれば中止すべきです。
続けるか休むかは痛みの強さと体の反応で判断しましょう。
Q2|コルセットやベルトを巻けば重い重量を扱ってもいいですか?
回答:ベルトは「重さを上げる許可証」ではありません。痛みがある時期は重さを追わないでください。
トレーニングベルトは腹圧を高め、フォームを安定させるための補助道具であり、「痛みをごまかして重い重量を扱うための道具」ではありません。
臨床では、痛みがあるのにベルトを巻いて重量を上げ続け、結果として腰痛を悪化させて来院する方を何度も見てきました。
痛みがある時期は、ベルトの有無にかかわらず重量よりフォームを優先し、負荷はいつもの5〜7割を目安にしましょう。
痛みが完全に引いてから、段階的に重量を戻すのが最も安全な方法です。
Q3|整形外科・整体・パーソナル、どこに相談すればいいですか?
回答:強い痛み・しびれがあるなら整形外科、動きのクセが原因なら整体やパーソナルが向いています。
腰痛の原因が「組織の損傷(椎間板・関節・神経など)」なのか、「動きのクセや筋バランスの問題」なのかで適切な相談先が変わります。
- 強い痛み・しびれ・力が入りにくい→整形外科(画像評価が必要)
- 動作で痛みが増減する・フォームのクセが気になる→整体/パーソナル
- トレーニング中の腰痛が繰り返す→パーソナル
臨床では、「病院で異常なし」なのに動きの改善で痛みが消えるケースが非常に多く、
逆に「明らかに神経症状があるのに運動を続けて悪化した」ケースも見てきました。
迷ったときは、痛みの強さ・しびれの有無・動作での変化の3つで判断するとミスマッチが起こりにくいです。
Q4|筋トレをどれくらい休むと筋力は落ちてしまいますか?
回答:一般的には2〜3週間で軽い低下が始まりますが、フォームの練習や軽負荷の継続でほぼ防げます。
「休むとすぐ筋力が落ちる」
と不安になる方は多いですが、実際には完全休養でも2週間ほどは大きく落ちません。
ただし、
- まったく動かない
- 生活習慣が不規則になる
- 痛みで姿勢が崩れる
などが重なると、筋力だけでなく動きの質が低下しやすくなります。
だからこそ、休んでいる間でも、
- デッドバグ
- ヒップリフト
- 軽い自重スクワット
など「痛みの出ない範囲の軽い運動」を続けると、筋力の低下はほとんど見られません。
臨床でも、腰痛で1〜2週間休んだクライアントが「軽い運動だけ継続していた」場合、復帰時のパフォーマンス低下が最小限で済んでいます。
心配しすぎず、軽く動きながら休むことを意識してください。
腰痛と付き合いながら筋トレを続けるために

腰痛があるときは、無理して続けるより「痛みの出方に合わせて調整する」ことが最も重要です。
強い痛みやしびれがある場合は中止し、軽度なら負荷や種目を工夫しながら動くことで回復が早まります。
体幹・お尻・股関節を軸にしたメニューを継続し、日常姿勢やセルフケアも整えることで再発を防げます。
もし「自分の体の状態でどう進めるべきか」迷う方は、一度専門家に相談してフォームや動きを確認してみてください。
今日のあなたの判断が、明日の腰の軽さにつながります。
【参考文献・出典(References)】
- National Institute for Health and Care Excellence (NICE).
Low back pain and sciatica in over 16s: assessment and management (NG59).2016.
https://www.nice.org.uk/guidance/ng59 - Gordon R, Bloxham S.
A systematic review of the effects of exercise and physical activity on non-specific chronic low back pain.
Healthcare (Basel). 2016;4(2):22.
https://doi.org/10.3390/healthcare4020022 - Hodges PW, Richardson CA.
Inefficient muscular stabilization of the lumbar spine associated with low back pain. Spine. 1996;21(22):2435–2445.
https://doi.org/10.1097/00007632-199611150-00014 - Schwanbeck S, Chilibeck PD, Binsted G.
A comparison of free weight and machine training on muscle strength.
Journal of Sports Science and Medicine. 2009;8:593–599.
https://www.jssm.org/researchjssm-08-593.xml - Nourbakhsh MR, Moussavi SJ.
Relationship between mechanical factors and incidence of low back pain.
Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2002;32(9):447–460.
https://doi.org/10.2519/jospt.2002.32.9.447
