この記事は「ゴルフをしていると腰が痛い、でも筋トレで予防できるなら取り組みたい」という方に向けて書いています。
ゴルフ技術やスイング論には触れません。
腰への負担を減らす体づくりの考え方と、安全に取り組める体幹・股関節トレーニングの基本をお伝えします。
▶腰痛全般の基礎知識は[生活シーン別・腰痛対策ガイド(ID30)]をご覧ください。
この記事でわかること
- ゴルフスイングが腰に負担をかける本当の理由
- 「腰でねじる」がなぜ危ないのか/回旋ストレスの考え方
- コースに出る前のウォームアップで何をすべきか(5分の内訳つき)
- 体幹と股関節に”安全な刺激”を入れる具体的なアプローチ
▼まず今日やること/最短ルート
コース前(5分)
胸椎の回旋ほぐし
左右5〜8回(仰向けで膝を倒し、上体を逆方向にゆっくり開く動き)
股関節の動かし込み
左右5〜8回(片膝を前に出したランジ姿勢から、上体をひねる動き)
体幹のブレース確認
プランク10〜15秒×3セット(うつ伏せで腕とつま先で支え、体を一直線に保つ)
週2〜3回(自宅トレーニング)
体幹
バードドッグ(四つ這いで対側の腕と脚を伸ばす)
デッドバグ(仰向けで腕と脚を交互に動かす)
各8〜10回×2セット
股関節
ヒップリフト(仰向けでお尻を持ち上げる)
サイドライイングクラム(横向きで膝を開くお尻のトレーニング)
各10回×2セット
各種目の詳しいやり方は後述の各セクション・関連記事へどうぞ
監修・執筆:ブラック太郎
柔道整復師・鍼灸師(国家資格)、NASM-PES(米国認定パフォーマンス強化スペシャリスト)取得。
整形外科クリニック・パーソナルトレーニングジム・整骨院で14年以上の臨床経験。
スポーツ動作と腰痛予防を専門とし、ゴルフをはじめとする回旋系スポーツのクライアントを多数サポート。
そもそも、なぜゴルフで腰痛になるのか

ゴルフはスポーツの中でも腰への負担が大きい競技のひとつです。
ある調査では、アマチュアゴルファーの約25〜35%が腰痛を経験しており、腰はゴルフによる怪我の中で最も多い部位であることが報告されています(※4)。
ゴルフスイングの特徴を一言で言えば、「体を大きくねじって、力を解放する運動の繰り返し」です。
この動作のなかで腰椎(腰の背骨)には、大きく分けて3種類の力がかかります。
- 前傾の維持による持続的な圧縮力
- バックスイング〜フォロースルーにおける回旋(ねじれ)ストレス
- 体幹が不安定なときの過剰な反りによるせん断力(=骨がズレる方向の力)
このうち特に問題になりやすいのが、2番目の回旋ストレスです。
腰椎の構造上、回旋(横方向のねじり)への耐久性はそれほど高くありません。
隣り合う腰椎どうしの回旋可動域は約2〜3度程度とされており、腰全体でも15〜20度前後が解剖学的な目安とされています(※1)。
にもかかわらず、体幹や股関節の動きが制限されていると、スイングの回旋力が逃げ場を失い、腰椎に集中してしまいます。
「腰でねじる」スイングが危ない理由
ゴルフ腰痛の多くは「腰をねじりすぎた結果」ではなく、「腰にしかねじれが行かなかった結果」です。
胸椎(背中側)や股関節の可動域が低下していると、スイングに必要な回旋をすべて腰椎で補おうとします。
これが繰り返されると、腰の関節・椎間板・靭帯に慢性的なストレスが蓄積します。
私がパーソナルジムで担当していたゴルファーのクライアントさんに、こんなケースがありました。
週2〜3回ラウンドをするアクティブな50代男性で、毎ラウンド後に左腰が痛くなると相談を受けました。
スイング動作を確認したわけではありませんが、立位と座位で胸椎の回旋可動域を確認すると、健側と比べて左方向への動きが明らかに硬い状態でした。
また股関節の内旋(=股関節が内側へ回る動き、ターゲット方向への体重移動に関わる)も制限されていました。
「腰が痛いから腰を鍛えよう」という発想は理解できます。
しかし実際には、腰の上下/胸椎と股関節/の動きを改善することが、腰への回旋ストレスを減らす最短ルートになります。
腰を守る体の設計図/「モビリティとスタビリティ」の考え方

💡現場でよく使われる考え方
腰椎は「安定させる関節」、その上下の胸椎と股関節は「よく動かす関節」とされています(※2)。
体づくりの目安として覚えておくと、どこを鍛えるべきかが整理しやすくなります。
この考え方に従うと、ゴルフ腰痛の予防に必要なアプローチが整理されます。
- 胸椎の回旋モビリティを高める→スイングの回旋を腰椎に集中させない
- 股関節の可動域を確保する→下半身の動きを腰椎に逃がさない
- 体幹(腰椎周囲)を安定させる→力の受け皿を作る
この3つが揃ったとき、腰椎は「動かされる関節」から「支える関節」に変わります。
コース前のウォームアップ/5分でできる「腰を守る準備」

ラウンド前のウォームアップは、パフォーマンスのためだけでなく腰痛予防にとっても重要です。
筋肉と関節を温めることで、急な負荷に対する耐性が上がります。
5分以内・3ステップで終わらせることを目標にしてください。
| ステップ | 内容 | 時間 |
|---|---|---|
| ① | 胸椎の回旋 (アイアンクロス系) | 約1分 |
| ② | 股関節の動かし込み (ランジ+ローテーション系) | 約2分 |
| ③ | 体幹のブレース確認 (プランク系) | 約2分 |
①胸椎を動かす(回旋準備)/約1分
- 仰向けで膝を曲げ、両膝を一方向に倒しながら上体だけをゆっくり逆方向に開く
- 目的:スイングで使う胸椎の回旋を事前に確認する
- 目安:左右5〜8回ずつ、呼吸を止めない
②股関節を動かす(下半身の準備)/約2分
- ランジの姿勢から体幹をひねる「ランジ+ローテーション」
- 目的:体重移動で使う股関節の内・外旋(内側・外側への回転)をウォームアップする
- 目安:左右5〜8回ずつ
③体幹をブレースする(安定の準備)/約2分
- プランクの姿勢を10〜15秒キープ×3セット
- 目的:腹圧(お腹全体で体を支える力)を高める感覚を体に呼び起こす
- 腰が反らない・お尻が上がらない範囲で行う
腰や股関節に現在痛みがある場合、ウォームアップの動作でも無理は禁物です。
痛みを感じたらその動きは中止してください。
張り感や軽い違和感のみであれば様子を見ながら行い、強い痛みや翌日以降に悪化する場合はまず整形外科に相談しましょう。
体幹・股関節への「安全な刺激」/ゴルファーが取り入れたい筋トレの方向性

ここからは、ゴルフ腰痛の予防を目的とした筋トレのアプローチをご紹介します。
種目の詳細な手順は関連記事に譲りますが、なぜその部位を鍛えるのか・どんな刺激を入れるのかという考え方と、動作のポイントをお伝えします。
💡週の目安
週2〜3回を目標に。
毎日やる必要はありません。
筋肉と関節が回復する時間を確保しながら継続することが大切です。
①体幹の安定を高めるトレーニング
ゴルフスイングでは、腹筋群・背筋群・横隔膜・骨盤底筋が協調して「腹圧」を作り出し、腰椎を保護します。
スイング中のインパクト直前〜フォロースルーにかけてこの腹圧が不十分だと、腰椎への負荷が増大します。
実際に、体幹周囲筋の協調的な活動が低下すると腰椎の安定性が著しく損なわれることが、生体力学的研究でも確認されています(※5)。
体幹トレーニングの基本方向は「腰椎を動かす運動(シットアップなど)」ではなく、「腰椎を固定したまま四肢を動かす運動」です。
代表的なアプローチ:
- バードドッグ
四つ這いで対側の腕と脚を伸ばす。背中が揺れない範囲で3秒止めるのがポイント。お腹に力が入っていればOK、腰に来たらNGのサイン - デッドバグ
仰向けで腰をフラットに保ちながら腕と脚を交互に動かす。腰が浮いたら動きを小さくする - プランク
姿勢を保つ等尺性(=動かずに筋肉に力を入れる)トレーニング。体が一直線を保てる時間だけ行う
各8〜10回または10〜15秒×2セットが取り組みやすい目安です。
なお、2019年の国内腰痛診療ガイドラインによると、慢性腰痛に対する運動療法は痛みの軽減と機能改善において有効性が認められており(※3)、継続的なトレーニングが腰痛予防の土台となります。
💡腹圧の正しいかけ方
ブレーシングとドローインの使い分けについては、[腹圧(IAP)の教科書(ID11)]で詳しく解説しています。
体幹トレーニングを始める前に一読することをおすすめします。
②股関節の可動域・筋力を高めるトレーニング
前述のとおり、股関節の動きが制限されると腰椎で回旋を補うことになります。
研究でも、股関節の可動域が制限された状態では腰椎・骨盤の代償的な動きが増加することが示されており(※6)、股関節の柔軟性と筋力の確保が腰痛予防の鍵になります。
股関節には「動かす」と「支える」の両面からのアプローチが必要です。
可動域アプローチ(ストレッチ方向)
- 腸腰筋(股関節前面の筋肉)のストレッチ/前傾姿勢での短縮を防ぐ
- ハムストリングス(太もも裏)の柔軟性確保/骨盤の動きに直結する
筋力アプローチ(安定・筋出力方向)
- ヒップリフト
仰向けで膝を立て、お尻を持ち上げる。
「お尻で持ち上げる感覚」を意識し、腰を反らせない。お尻の奥に効いていればOK。
各10回×2セットが取り組みやすい目安 - サイドライイングクラム
横向きで膝を重ねて曲げ、上の膝だけゆっくり開く。
股関節外側(お尻の横)に効いていればOK
腸腰筋の硬さが腰痛に関係するメカニズムと実技は[腸腰筋が硬いと腰が痛い?(ID26)]で、ヒップリフトの詳細なやり方は[寝ながらヒップリフト(ID14)]で確認できます。
下半身全体と腰痛の関係については[下半身で腰を守る運動連鎖の理論(ID25)]もあわせてご覧ください。
③回旋に対応した体幹トレーニング(やや発展)
体幹の安定性が十分についてきたら、「回旋への対応力」を高めるステップに進むことができます。
- パロフプレスチューブやケーブルを使った回旋抵抗トレーニング
体幹を回旋させようとする力に抵抗しながら、腰椎を固定する能力を鍛える - ウッドチョップ系(ゆっくり・低負荷から)
胸椎主導の回旋を意識しながら行う
回旋系トレーニングは、基本的な体幹安定(バードドッグ・プランクが問題なくできる状態)が確立してから取り入れてください。
腰に痛みがある状態では行わないようにしましょう。
ラウンド後のケア/帰宅したらやること

ラウンド後は腰周囲の筋肉に疲労と緊張が蓄積しています。
「疲れたからそのまま寝る」は翌日以降の腰痛につながりやすいパターンです。
5〜10分で終わるケアを習慣にしましょう。
①軽い胸椎・股関節のストレッチ
ウォームアップで行ったアイアンクロス系の動きを、今度はゆっくり・20〜30秒キープする形で行います。
強く伸ばす必要はありません。
「気持ちよく解放される感覚」を目安にしてください。
②腸腰筋のリリース(股関節前面)
ラウンド中の前傾姿勢で短縮しやすい股関節前面(腸腰筋)を、片膝をついたストレッチでゆっくりほぐします。
詳細な手順は[腸腰筋が硬いと腰が痛い?(ID26)]を参照してください。
③入浴で血流を促す
ラウンド当日の夜は、熱感や腫れがなければ入浴(シャワーだけでなく湯船)が効果的です。
温めることで血流が改善し、筋肉の回復が促されます。
温める・冷やすの判断基準については[腰痛に湿布は効く?(ID10)]で詳しく解説しています。
ラウンド後の腰の状態を以下で判断してください。
軽い張り感・疲労感のみ
セルフケア(ストレッチ・入浴)で様子見
強い痛み、または脚へのしびれ・違和感がある
翌日を待たずまず整形外科へ
翌日以降も痛みが悪化している
速やかに整形外科を受診
よくある質問(FAQ)

Q.ゴルフ腰痛はストレッチと筋トレ、どっちを先にすべき?
基本的には「ストレッチ(動きを出す)→筋トレ(安定させる)」の順が理にかなっています。
股関節や胸椎の可動域が制限されたまま筋トレだけ行っても、硬さによる代償動作(腰に負担がかかる動き)が残ってしまいます。
まずは動きを確保し、その上で筋力を積み上げる順序を守りましょう。
Q.ゴルフで腰が痛いのはヘルニアの可能性がある?
脚に痺れや電気が走るような痛みが伴う場合は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など神経系への影響が考えられます。
筋トレやストレッチを始める前に、まず整形外科での診察を受けることを強くおすすめします。
「腰だけが痛い・しびれはない」という場合でも、症状が続くようであれば整形外科に相談してください。
Q.ゴルフで腰痛になるのは左右どちらが多い?
右打ちの場合、フォロースルーで左側(ターゲット方向)の腰に圧縮と回旋が集中しやすく、左腰を訴える方が多い印象です。
一方でバックスイング時に右腰にストレスが出る方も一定数います。
どちら側が痛いかよりも、「なぜその側に負担が集中しているか」という原因の特定が重要です。
Q.腰痛があってもゴルフの筋トレはできますか?
現在進行中の痛みがある場合は、まず整形外科で状態を確認することを優先してください。
軽い張り感程度であれば、痛みが出ない範囲で軽い体幹トレーニングから段階的に再開することは考えられます。
痛みのレベルや休む基準については[腰痛のとき筋トレを休むべき?(ID9)]も参考にしてください。
Q.ゴルフで鍛えてはいけない筋肉はある?
「鍛えてはいけない筋肉」というより、鍛え方・タイミングを間違えると逆効果になる動きがあります。
腰が不安定な状態での高重量回旋系種目や、腰椎の屈曲・伸展を繰り返すシットアップ系の反復は、腰への負担を高める可能性があります。
まず体幹安定を土台にして、その上に筋力・可動域を積み上げる順序を守ることが大切です。
Q.腰痛がひどいサインは?すぐ病院へ行くべき症状
⚠️以下の症状がある場合は、筋トレや自己ケアを中止し、まず整形外科を受診してください。
- 脚にしびれ・電気が走るような痛みが出る(坐骨神経痛・ヘルニアの可能性)
- 足の力が入りにくい・歩きにくいなど、進行する筋力低下がある
- 足の感覚が鈍い・触った感覚が左右で違う(神経の麻痺が疑われる)
- 排尿・排便に異常がある(馬尾症候群の可能性)
- 安静にしていても痛みが強い・夜中に痛みで目が覚める
- 転倒・衝突など明らかなケガのきっかけがある
まとめ/ゴルフ腰痛は「腰だけの問題」ではない

この記事のポイント
- ゴルフ腰痛の根本には「腰椎への回旋ストレス集中」がある
- 原因は腰そのものより、胸椎・股関節の動きの制限にあることが多い
- ウォームアップ5分(胸椎1分・股関節2分・体幹2分)でラウンド前の準備をする
- 体幹トレーニングは「腰を動かす」ではなく「腰椎を固定して四肢を動かす」が基本
- 股関節は可動域と筋力の両面からアプローチする(週2〜3回・各2セット)
- ラウンド後のストレッチと入浴でその日のうちにケアする
- 痺れ・筋力低下・感覚異常があれば迷わず整形外科を受診する
焦らず続けることが、一番の近道です。
参考文献
※1: Pearcy MJ, et al. Three-dimensional x-ray analysis of normal movement in the lumbar spine. Spine. 1984;9(3):294-297. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6233764/ / White AA, Panjabi MM. Clinical Biomechanics of the Spine. 2nd ed. Lippincott Williams & Wilkins; 1990. ※腰椎回旋可動域に関する解剖学・生体力学的知見
※2: Cook G, et al. Movement: Functional Movement Systems. On Target Publications; 2010. https://www.movementbook.com/ ※モビリティ・スタビリティ交互モデルの提唱(現場での体づくりにおける参考枠組みとして)
※3: 日本整形外科学会・日本腰痛学会 監修『腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)』南江堂. https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/low_back_pain.html ※運動療法が慢性腰痛の改善に有効であることを示した国内の公的診療指針
※4: Gosheger G, et al. Injuries and overuse syndromes in golf. The American Journal of Sports Medicine. 2003;31(3):438-443. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12750140/※アマチュアゴルファーにおける腰部障害の有病率・部位別分布に関する疫学調査
※5: Cholewicki J, McGill SM. Mechanical stability of the in vivo lumbar spine: implications for injury and chronic low back pain. Clinical Biomechanics. 1996;11(1):1-15. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11415593/ ※体幹周囲筋の協調的活動と腰椎安定性の関係を示した生体力学的研究
※6: Van Dillen LR, et al. Effect of active limb movements on symptoms in patients with low back pain. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2001;31(8):402-413. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11508614/ ※股関節・下肢の動作制限が腰椎・骨盤帯の代償動作に与える影響を示した研究
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