腰痛があると、
「体幹トレーニングはやったほうがいいのか、それとも危険なのか」
と迷う人は少なくありません。
体幹トレーニングは腰痛改善に効果的と言われる一方で、
やり方や判断を間違えると、痛みを悪化させてしまうケースもあります。
大切なのは、体幹トレをするか・しないかではなく、
今の腰の状態でやってよいかどうかを判断できているかです。
この記事では、整形外科クリニックやパーソナルジムでの臨床経験をもとに、
腰痛がある人が体幹トレを
- やっていいケース
- 避けるべきケース
- 安全に行いやすい考え方
を整理して解説します。
読み終える頃には、
「とりあえず体幹を鍛える」という不安な選択から抜け出し、
今の腰に合った体幹トレを判断できるようになります。
※本記事は、腰痛がある状態を前提とした体幹トレーニングの考え方を扱っています。
健康な状態での一般的な体幹トレとは判断基準が異なります。
【結論だけ知りたい人へ】
🔸腰痛がある人の体幹トレーニングは、条件を満たせば行ってよい
🔸動作中に痛みが出ない・悪化しないことが大前提
🔸自分でフォームを安定させられる状態で行うことが条件
🔸不安を抑える目的・痛みをごまかす目的の体幹トレはNG
🔸判断に迷う場合は、体幹トレよりもトレーニング設計の見直しを優先
※このあとで、OK/NGの判断基準と安全な考え方を詳しく解説します。
腰痛があるとき体幹トレーニングはやっていい?

腰痛があると、
「体幹トレーニングなら腰に負担が少なく、安全なのでは」
と考えてしまう方は少なくありません。
しかし、体幹トレーニングはやり方と判断を間違えると、腰痛を悪化させることもある運動です。
大切なのは、体幹トレかどうかではなく、
今の腰の状態で行ってよい条件を満たしているかどうかです。
ここではまず、腰痛があるときに体幹トレーニングをしてよいのか、その結論と理由を整理します。
結論|腰痛があっても体幹トレは「条件付きでOK」
結論から言うと、腰痛があっても体幹トレーニングは「条件を満たしていればOK」です。
つまり、痛みをごまかさず、フォームを自力で保てる状態であれば、体幹トレは検討できます。
ただし、これは
- 体幹トレなら誰でも安全
- 腰痛があれば体幹を鍛えるべき
という意味ではありません。
体幹トレーニングを行ってよい条件は、次のような状態です。
- 動作中に腰の痛みが出ない、または悪化しない
- フォームを自分で安定させられている
- 動作の安定を目的に行っている
これらを満たしている場合に限り、
体幹トレーニングは腰に負担をかけすぎず、再発予防や動作安定に役立つ可能性があります。
逆に言えば、これらの条件を満たしていない状態で行う体幹トレーニングは、
「安全そうに見える」だけで、腰痛を長引かせる原因になりかねません。
体幹トレ=安全ではない理由
体幹トレーニングが「腰にやさしい」「安全」と思われやすい理由の一つは、
動きが小さく、負荷が軽そうに見えるからです。
しかし実際には、体幹トレーニングは腰椎や骨盤の安定を自力で保つ運動です。
腰の状態によっては、この「支える負荷」そのものが刺激になってしまうことがあります。
特に注意が必要なのは、次のようなケースです。
- 体幹トレ中に腰に力が入りすぎてしまう
- 腰を反らせたり丸めたりしてフォームが崩れている
- 「効かせよう」と意識するほど腰が緊張してしまう
- 痛みや不安を我慢しながら続けている
この状態では、体幹トレーニングは腰を守る運動ではなく、腰を使いすぎる運動になります。
また、「体幹が弱いから腰痛になったはず」
という思い込みから、無理に体幹トレを続けてしまうケースも少なくありません。
臨床現場で多いのは、本当の原因がフォーム・負荷・疲労なのに、体幹トレで解決しようとしてしまうパターンです。
そのため、体幹トレーニングは「腰痛だからやるもの」ではなく、
腰の状態を見極めたうえで選ぶ選択肢の一つとして考える必要があります。
体幹トレーニングが腰痛改善につながる理由

体幹トレーニングというと、プランクのように体を固めて姿勢をキープする運動を思い浮かべる方が多いと思います。
実際、体幹トレの目的は、腰を積極的に使うことではありません。
動作中に体の中心を安定させ、腰に余計な負担が集中しない状態を作ることです。
ここでは、体幹トレが腰痛改善につながる理由を、役割と仕組みだけに絞って整理します。
体幹の役割は「腰を動かす」ことではない
体幹トレーニングは、腰を反らしたり曲げたりして鍛える運動ではありません。
プランクに代表されるように、姿勢を崩さずに保つための運動です。
本来、体幹の役割は、腕や脚が動くときに体の中心を安定させることにあります。
体幹がうまく働くと、腰が代わりに動いて支え続ける必要がなくなります。
腰痛がある人ほど、臨床現場では、動作中に体幹が使えず、腰だけで姿勢を保とうとしているケースを多く見かけます。
体幹トレーニングは、その「腰に任せすぎている状態」を減らすための手段として考えるべき運動です。
腹圧と動作安定が腰への負担を減らす
体幹トレーニングが腰痛改善に関係する理由は、腹圧にあります。
腹圧とは、お腹の内側から体幹を支える力のことです。
腹圧が適切に入ると、体の中心が安定し、動作中のブレが減ります。
その結果、腰椎に集中しやすい負担が分散されやすくなります。
ここで重要なのは、体幹トレで腰そのものを強くすることではありません。
腰が余計な仕事をしなくて済む状態を作ることです。
この前提が守れている場合に限り、体幹トレーニングは腰への負担を増やさず、腰痛改善につながる可能性があります。
腰痛がある人の体幹トレOK/NG判断基準

腰痛がある状態で体幹トレーニングを行うかどうかを決めるうえで、一番重要なのは「どの種目か」ではありません。
今の腰の状態で、その体幹トレを行ってよいかどうかを判断できているかです。
体幹トレは、正しく選べば再発予防や動作安定に役立つ一方、
判断を誤ると、腰痛を長引かせる原因にもなります。
ここでは、腰痛がある人が迷わず判断できるように、
体幹トレをやってよいケース(YES)と、避けるべきケース(NO)を明確に整理します。
体幹トレをやってもよいケース(YES判定)
腰痛があっても、次の条件を満たしている場合は、体幹トレーニングを検討しても問題ないケースと考えられます。
まず大前提として、
体幹トレ中に腰の痛みが出ない、または悪化しないことが必要です。
違和感があっても、動作を続ける中で強くならない状態が目安になります。
加えて、自分で姿勢とフォームを安定させられることも重要です。
- 誰かに支えてもらわないと姿勢を保てない
- 力を入れすぎて呼吸が止まってしまう
といった状態ではYES判定にはなりません。
さらに、
体幹トレを痛みを抑えるために行っていないことも条件です。
目的が、動作の安定や再発予防に向いている場合に限り、体幹トレは腰に過度な負担をかけにくくなります。
まとめると、YES判定の基準は
- 痛みが出ない・悪化しない
- フォームを自力で保てる
- 痛みをごまかす目的ではない
この3点が揃っているかどうかです。
体幹トレを避けるべきケース(NO判定)
一方、次のような状態に当てはまる場合は、体幹トレーニングは避けるべき段階と判断できます。
まず、体幹トレ中に腰の痛みが増える、広がる、質が変わる場合です。
これは、体が「今は支える負荷に耐えられない」と出しているサインです。
また、フォームを保つために腰に力を入れ続けてしまう状態もNO判定です。
プランク中に腰が反る、腹圧が抜ける、呼吸が浅くなるなどは、腰が代わりに頑張ってしまっている状態と考えられます。
さらに、「体幹を鍛えれば腰痛が良くなるはず」という思い込みで、
不安や違和感を我慢しながら続けているケースも注意が必要です。
この段階では、体幹トレが原因ではなく、判断ミスが腰痛を長引かせています。
NO判定に当てはまる場合は、体幹トレを工夫する前に、
負荷・回数・順番・休養など、トレーニング全体を見直す必要があります。
腰痛がある人でも安全に行いやすい体幹トレ3選

腰痛があるときの体幹トレーニングで大切なのは、
「どの種目をやるか」ではなく
「どの姿勢で、どの程度体を安定させるか」です。
体幹トレは、いきなり強度を上げる必要はありません。
まずは、腰を動かさずに体の中心を安定させる練習から始めることで、
腰に余計な負担をかけずに体幹を使う感覚を身につけやすくなります。
ここでは、
- 自宅でできる
- 初心者でも取り組みやすい
- 腰痛がある人でも判断しやすい
という条件を満たした、姿勢ベースの体幹トレーニングを3つ紹介します。
目安は1種目5〜10秒×3〜5回。痛みや違和感が出る場合は、その時点で中止してください。
①仰向けで行う体幹トレ(ブレーシング)
この種目は「腹圧の感覚を覚えるためのスタート地点」です。
仰向け姿勢は、腰への負担が最も少なく、腹圧を均等に入れる感覚を練習しやすい姿勢です。
腰を反らしたり固めたりせず、体幹全体で支える基礎を作ります。
手順
- 仰向けに寝て、膝を立てる
- 腰と床の隙間を無理に潰そうとしない
- 息を軽く吸いながら、お腹・脇腹・腰を均等に膨らませる
- お腹を膨らませた状態をキープ(5〜10秒)
- 呼吸を止めずに繰り返す
フォームのポイント
- 前のお腹だけでなく、横・後も膨らませる
- 腰やお尻に力を入れすぎない
- 呼吸が止まらない範囲で行う
NG例
- 腰を床に押しつける
- お腹をへこませる
- 息を止めて耐える
②四つ這い姿勢の体幹トレ(四つ這いブレーシング)
四つ這い姿勢は、
仰向けよりも少し負荷が上がり、動作中の安定性を確認しやすい姿勢です。
腰を動かさずに体幹で姿勢を保てるかをチェックできます。
手順
- 肩の下に手、股関節の下に膝を置く
- 背中は真っ直ぐに保つ
- 仰向けと同じようにブレーシングを行う
- 姿勢を崩さず5〜10秒キープ
- 呼吸を続けたまま繰り返す
フォームのポイント
- 背骨は一直線のイメージ
- 体が前後左右に揺れない
- 腰で支えようとしない
NG例
- 腰が反る・丸まる
- 肩がすくんで上がる
- お腹の全周が膨らんでいない
③立位で行う軽い体幹安定エクササイズ(立位ブレーシング)
立位では、日常動作や筋トレ動作に近い形で体幹が使えているかを確認できます。
腰痛が落ち着いてきた段階の確認用として適しています。
手順
- 足を肩幅程度に開いて立つ
- 仰向け・四つ這いと同じブレーシングを行う
- 姿勢を崩さず5〜10秒キープ
- 呼吸を止めずに繰り返す
フォームのポイント
- 胸を張りすぎない
- 腰を反らさない
- 体が上下にブレない
NG例
- 腰を固めて耐える
- 胸だけで呼吸する
- 緊張しすぎて力が抜けなくなる
これらの体幹トレは、「鍛える」ための運動ではなく、腰を使いすぎない体の使い方を確認するための運動です。
腰痛がある人が体幹トレで判断を誤りやすい共通パターン

腰痛がある人ほど、
- 体幹トレなら腰に負担が少なそう
- プランクなら腰を動かさないから安全そう
と感じて体幹トレーニングを選びがちです。
しかし臨床現場では、種目そのものよりも判断のズレによって腰痛を長引かせてしまうケースを多く見てきました。
ここでは、腰痛がある人が体幹トレを行う際に、
特に誤りやすい共通パターンを2つに絞って整理します。
体幹トレが悪いのではなく、今の状態に合っていない判断とは何かを明確にすることが目的です。
体幹を安定させる前に動きを足してしまう判断が危険な理由
腰痛がある状態で注意したいのが、
体幹を安定させる前に、動きを増やしてしまう判断です。
体幹トレーニングは本来、体幹を動かさずに姿勢を保てるかを確認する運動です。
しかし、早い段階で手足を大きく動かしたり、回数や時間を増やしたりすると、
体幹で支えきれない分の負担が腰に集中しやすくなります。
特に多いのが、
- 動作中に体が揺れている
- 無意識に腰でバランスを取っている
- 安定させているつもりが、腰だけが頑張っている
といった状態です。
この時点で、体幹ではなく腰が主役になっています。
体幹トレは「動きを足す」前に、動かさずに安定できているかを確認する必要があります。
この順番を飛ばすと、腰痛が改善するどころか、負担を増やす結果になりやすくなります。
プランクなどの「耐える系」が合わないケース
体幹トレの代表例として、プランクを思い浮かべる方は多いと思います。
実際、プランクは体を固めて安定させる典型的な体幹トレーニングです。
ただし、腰痛があるすべての人に合うわけではありません。
問題なのはプランクという種目ではなく、耐え方が今の状態に合っていないケースです。
たとえば、
- 姿勢を保つために腰を反らせてしまう
- お腹ではなく腰や背中に力が入り続ける
- 呼吸が浅くなり、力を抜けなくなる
- 終了後に腰の違和感や張りが強くなる
このような状態が出ている場合、
プランクは体幹トレではなく、腰で耐えるトレーニングになっています。
重要なのは、
- プランクだからNG
- 耐える系だから危険
という話ではありません。
- 腰を動かさずに安定できているか
- 痛みや違和感を我慢していないか
- 終了後に状態が悪化していないか
これらを満たせない場合は、その体幹トレは今の腰の状態には合っていないと判断すべき段階です。
腰痛があるときほど、できるかどうかではなく今やるべきかどうかで判断する視点が欠かせません。
体幹トレーニングで不安が出る人が先に見直すべきこと

体幹トレで不安感が出る場合、多くは種目そのものではなく「全体設計のズレ」が原因です。
体幹トレーニングを始めたものの、
- これで合っているのか不安になる
- 腰が怖くて集中できない
と感じる人は少なくありません。
ただし臨床現場で多いのは、不安の原因が体幹トレそのものではないケースです。
体幹トレに問題があると決めつける前に、
まずはトレーニング全体の設計が今の腰の状態に合っているかを確認する必要があります。
ここでは、特に見直すべきポイントを整理します。
種目・負荷・順番がズレている可能性
体幹トレで不安が出ると、この体幹トレが合っていないのでは?と考えがちです。
しかし実際には、体幹トレの種目の問題ではなく、前後の設計がズレているケースが非常に多く見られます。
まず確認したいのが「種目」です。
体幹トレ以前に、今の腰に対して負担が大きい種目を入れていないか。
すでに腰が疲労している状態で体幹トレを行うと、安定させる余力がなくなり、不安や違和感が出やすくなります。
次に「負荷」です。
体幹トレ自体は軽くても、回数・セット数・全体のトレーニング量が多すぎると、
体幹で支えきれず腰が代償しやすくなります。
そして「順番」です。
疲労が溜まった終盤に体幹トレを入れているだけで、
同じ種目でも不安や腰の張りが強く出ることがあります。
このように、体幹トレが原因に思っていたとしても、
実際には種目・負荷・順番の組み合わせが今の腰に合っていないだけ、というケースは決して珍しくありません。
体幹トレが原因ではないケースも多い
体幹トレ中に不安や違和感が出ると、体幹トレは自分には合わないと結論づけてしまいがちです。
しかし、臨床現場で多いのは体幹トレ以外の要因が重なっているケースです。
たとえば、
- 前日のトレーニングや仕事による疲労が抜けていない
- 睡眠不足や回復不足が続いている
- 日常動作や姿勢で腰に負担が蓄積している
こうした状態では、本来問題のない体幹トレでも不安や違和感が出やすくなります。
また、「腰痛なら体幹トレをやらなければいけない」という思い込みから、
腰の状態を十分に確認しないまま続けてしまうケースも少なくありません。
重要なのは、不安感が出た=体幹トレが悪いと短絡的に判断しないことです。
体幹トレは、腰の状態が整っていてこそ意味を持つ運動です。
不安が出る場合は、体幹トレを疑う前に、
今の状態・全体設計・回復状況を一段引いて見直すことが、腰痛を長引かせないための重要な判断になります。
体幹トレーニング中に不安が出る場合、「今はトレーニングで無理をする段階ではない」と判断することも大切です。
そのような時期は、無理に体幹トレーニングを続けるのではなく、日常生活や仕事中の腰の負担を一時的に減らす選択肢を考えるのも一つです。
たとえば、マグダビットの腰用サポーターのように、動作を過度に制限せず、生活動作中の不安を軽減する目的で使えるタイプであれば、
「トレーニングの代わり」ではなく「回復を待つ間の補助」として使いやすい場合があります。
ただし、腰用サポーターは筋肉の代用ではなく、永遠につけ続けるものではありません。
あくまで今は鍛える段階ではないと判断したときの一時的な選択肢として位置づけ、
腰の状態が整えば外していく前提で使うことが重要です。
まとめ|体幹トレは「強化」より「判断」がすべて

腰痛があると、体幹トレーニングを
- やったほうがいいか
- やらないほうがいいか
という二択で考えがちです。
しかし本当に重要なのは、今日の腰の状態でやってよいかを判断できているかです。
体幹トレは、正しく選べば腰の安定や再発予防に役立ちます。
一方で、状態を無視して行えば、腰を守るどころか負担を増やす原因にもなります。
種目そのものではなく、
- 痛みが出ていないか
- フォームを自力で保てているか
- 自分の体調と設計が合っているか
この視点で判断することが欠かせません。
もし体幹トレに不安がある場合は、無理に続ける必要はありません。
一度立ち止まり、今の腰の状態に合った選択ができているかを見直してください。
正しい判断こそが腰痛改善の1番の近道です。
👉腰痛時の筋トレ判断をさらに整理したい方は、以下の記事も参考にしてください。
参考文献・引用元(論文/公的機関)
- NICE Guideline NG59: Low back pain and sciatica in over 16s: assessment and management (英国国立医療技術評価機構, NICE)
- Qaseem A, et al. (2017): Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians (Annals of Internal Medicine)
- World Health Organization (WHO) (2023): WHO guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain in adults (世界保健機関)

